研究概要 |
我が国で使用されていると考えられる数種の新規防汚剤を供試し、以下の課題に取り組んだ。 1.新規防汚剤による水環境の汚染の現状把握 1999年4月から2001年1月までの間、2週間毎に定点でのサンプリングを行い、海水中のIrgarolおよびその分解産物M1、DCMUの残留濃度を定量した。濃度は高い順にDCMU>Irgarol>M1であった。 2.分解性評価 太陽光近紫外線を模擬するランプを48時間連続照射し、水中での防汚剤の光分解性を評価した。過酸化水素やベンゾフェノンなどの既知の光増感物質はIrgarolおよびM1を完全分解させた。一方、土壌や河川水由来の天然腐植物質が存在する場合、Irgarolは50%以上が分解したが、M1は殆ど分解しなかった。これら天然に存在する物質による光増感反応は太陽光近紫外線が入射する水の表層において現実に生じていると考えられるので、防汚剤の運命に大きな影響を及ぼしていると推察された。 3.生態系影響評価 キングサーモン胚由来の魚類浮遊培養細胞(CHSE_<SP>細胞)を用いた毒性試験法を開発した。この試験結果を、従来から行われている魚類個体試験(初期生活段階試験)の結果と比較した。5種類の新規防汚剤はいづれも、魚類細胞よりも魚類個体に対してより強い致死影響を示した。両試験から求められた5種の防汚剤の毒性強度(24-hour EC50,28-day LC50)には高い相関が認められたので、細胞試験は個体試験を代替できることが示された。次に、植物に対する影響を微細藻類、ウキクサ、レタスを用いたマイクロバイオテストにより評価した。供試防汚剤の内、ZnPT,CuPTは魚類に対する影響が極めて強かったが、植物に対する影響は最も弱かった。これとは逆に、lrgarol,DCMUは植物に対する影響が極めて強く、魚類に対する影響は最も弱かった。KH101は魚類および植物の両方に対して中程度の毒性を示した。
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