我が国で使用されていると考えられる数種の新規防汚剤を供試し、以下の課題に取り組んだ。 1.新規防汚剤による水環境の汚染の現状把握 1999年1月から2001年12月までの間、2週間毎に岡山県南部の2定点でのサンプリングを行い、海水中のIrgarol、その分解産物M1、Diuronの残留濃度を定量した。残留濃度が高い順にDiuron>Irgarol>M1であったが、残留濃度の季節変動とボート活動との間には明瞭な相関関係は見いだせなかった。 2.光分解性評価 太陽光近紫外線を模擬するUV-Aランプを照射した防汚剤(ピリチオン化合物)の毒性を評価することにより、間接的に防汚剤の光分解性を評価した。毒性はワムシ致死試験およびウニ受精卵発生阻害試験で評価した。一定の紫外線強度のもとで光照射時間が長くなるにつれピリチオン化合物の毒性は減少したので、光分解が生じたと考えた。2時間光照射した亜鉛ピリチオンの紫外線吸収スペクトルはほぼ完全分解と考えられ、ワムシに対する毒性は認められなかったが、同試料はウニに対しては依然として強い毒性を示した。 3.中国における船底防汚剤の調査 中国では未だ有機スズ剤が使用されていた。同時に、2008年からの有機スズ剤の世界的全廃に向け、日本を含む先進諸国の塗料メーカーが参入し、有機スズ剤を含まない新規防汚剤が用いられていた。中国での新規防汚剤の情報は日本国内と同様に公表されておらず、メーカーのみが把握している状況と考えられた。 4.4年間の総括および今後の課題 報告書を作成し、4年間の研究成果を総括すると共に今後の課題をまとめた。
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