研究概要 |
我が国で使用されていると考えられる数種類の新規防汚剤を供試し、以下の課題に取り組んだ。 1.新規防汚剤による我が国水環境の汚染 瀬戸内海を中心とした西日本沿岸海域の港湾海水中での防汚剤の残留分析を行った。海水中の最高濃度は、Irgarol 1051が0.30μg/L、M1が1.9μg/L、Diuronが3.1μg/Lであった。定点における3年間にわたる調査結果から、残留濃度は概して高い順にDiuron>Irgarol 1051>M1であった。 2.分解性評価 Irgarol 1051が水銀イオンによって触媒される加水分解により分解し、分解産物M1を生成した。Irgarol 1051は太陽光によっても分解し、分解産物M1を生成した。太陽光下での分解速度は天然水中で早く、腐植物質による光増感分解が示唆された。Irgarol 1051およびDiuronを含む市販塗料を用いた実験から、我が国沿岸海水に検出されたDiuron, Irgarol 1051, M1は市販塗料に由来することを確認した。 3.生態系影響評価 Irgarol 1051とその分解産物M1について、細菌、微細藻類、海藻、ウキクサ、甲殻類、陸生植物に対する影響を定量的に評価し、残留濃度と比較することによってIrgarol 1051の環境リスクを評価した。数種類の新規防汚剤について、魚類の生死および細胞増殖、ウニ受精卵の発生、3種類の非標的植物の増殖に対する影響を評価した。魚類試験では28日間の初期生活段階試験と24時間の浮遊培養細胞試験を実施した。金属ピリチオン化合物の毒性が全ての生物に対して強く、特にウニ受精卵に対する影響が極めて強かった。UV-Aランプを用いて光分解処理した金属ピリチオン化合物はワムシとウニに対する毒性が減少したので、金属ピリチオン化合物は容易に光分解したと考えた。
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