広島市にある合流式の下水処理場において、非降雨時、降雨時に採水を行い、多環芳香族炭化水素(PAHs)や有機リン酸トリエステル(OPEs)の流入挙動を観測した結果、多くの有害化学物質では懸濁態として市街地から流出し、特に降雨時のファーストフラッシュ現象が特徴的であることを明らかにした。また、下水処理場からの放流量と汚泥への移行量を明らかにして、下水処理における物質循環特性を明らかにするとともに、放流水域への負荷量を観測した。さらに、流域内2地点で晴天時堆積量を測定し、これと降雨時流入量との関係を解析した。以上を解析することから、市街地から下流水域への有害化学物質の流出量を明らかにすることができるものと考えている。 広島湾において得た水、底質、魚中のPAHsと重金属の観測データをもとに、その相互の関係を解析することから、有害化学物質の沿岸生態系での動態、運命に関しての解析を進めた。また、溶存有機物の動態、収支を明らかにすることから、有害化学物質の動態との関係を解析する基礎とした。 最後に、環境庁の「化学物質と環境」を利用して、数十の有害化学物質の全国河川、湖沼、海域での水、底質濃度間の関係を解析した。その結果、各水域では線形な関係を有することが多いこと、底質-水濃度比はオクタノール・水分配係数の増加とともに大きくなるが、親水性の物質でも平衡実験の結果より底質側に多く存在することがわかった。
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