広島市と広島湾において、浮遊粉塵、堆積粉塵や下水、河口域、内湾域での水・底質サンプルを採取し、多環芳香族炭化水素(PAHs)の濃度を測定した。溶存態と懸濁態の濃度から分配関係を解析し、モデル化した。また、陸域から海域への流下に伴う濃度変化をもとに、有害化学物質の沿岸生態系での動態、運命に関しての解析を進めた。また、浮遊粉塵、堆積粉塵を太陽光に当てて、その結果生じるPAHsの光変換現象を実験により測定した。その結果、光変換速度は夏高く、冬低いこと、水中においては溶存態でその速度は高いが、懸濁態では低いこと、また光変換によりPAHs濃度は減少するものの、変換生成物もかなりの毒性を有することがわかった。 東広島市を中心に、浮遊粉塵、堆積粉塵、簡易下水処理施設、河川での有機リン酸トリエステル(OPEs)の動態を観測した。まず、簡易下水処理施設での観測結果をもとに、原単位を明らかにした。また、河川水中での動態を模擬した実験を行うことから、自然水域での変化速度を求めた。以上をべースにOPEsの河川水中と底質中の濃度予測モデルを作成した。 最後に、環境庁の「化学物質と環境」を利用して、数十の有害化学物質の全国河川、湖沼、海域での水、底質濃度を流域特性、化学物質の物性から予測する手法を検討した。重回帰モデル、数量化1類モデルともに、かなりの精度で化学物質の濃度予測が可能であり、モニタリングの前のスクリーニングとしての活用が期待されることがわかった。
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