研究概要 |
広島湾流域において降下粉塵量を測定し,また団地の雨水流出管において降雨時のPAHs流出総量を測定し,両者を比較した.降雨強度,降雨量が大きいと流域に堆積した粉塵,ならびにそれに取り込まれたPAHsの大部分が下流の水域に流出することがわかった. 河川,大気からのPAHs流入負荷量と湾水の交換速度をもとに広島湾水中のPAHs濃度を予測したところ,実測値とかなりよく一致した.すなわち,流域でのPAHsの堆積量,大気からのPAHs降下量が湾水の濃度を決定していることがわかった. 各種有害化学物質濃度とそれらの生態毒性値より,リスク評価を行ったところ,広島湾では各種PAHsのリスクが対象とした化学物質の中では最も高く,そうした物質群の適正な管理が必要であることがわかった. 広島大学構内で採取した浮遊粉塵,降下粉塵を72時間,太陽光にさらすことで粉塵に含まれるPAHsがどのように変化するかを実験的に明らかにした.その変化速度を一次減少速度係数として表現すると小径粉塵で0.16(d^<-1>),大径粉塵で0.11(d^<-1>),降下粉塵で0.06(d^<-1>)程度と,小径粉塵が他と比べ大きいことがわかった.小径粉塵の一炊減少速度係数は夏期に高く,冬期に低い傾向が見られた. 化学物質のリスク評価を目的に、物質特性、流域特性から水質、底質の有害化学物質濃度を予測するモデルの作成を目指した。まず、28物質、64地点における化学物質濃度、ならびにそれらに関する物質特性、流域特性を整理したデータベースを構築した。次に、重回帰分析、数量化理論I類を当てはめた結果、両モデルとも全物質、全地点入力の場合、水質では実測値の±1オーダー、底質では±1.5オーダーの範囲内にほとんどすべてのサンプルが入ることがわかった。また、物質別・地点別モデル、説明変数の説明力、精度あるモデルの構築に必要なサンプル数などに関して議論した。
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