本研究は、富栄養湖で一般的なアオコが、貧栄養的な琵琶湖で発生する原因を明らかにするため、湖水泥系の窒素/リン循環がラン藻増殖に及ぼす影響と、植物プランクトンの相互作用結果としてのラン藻優占化の2観点から、ラン藻優占化のメカニズムを解析し、琵琶湖環境管理に必要とされるアオコ発生機構を明らかにすることを目的とする。 11年度の研究で底泥からの窒素リン回帰が、夏季のラン藻増殖を支えていることが示されたので、12年度は6月から11月にかけて、琵琶湖湖心で毎月プランクトン試料を採取、群集構成と炭素窒素量の変化を追及するとともに、栄養塩添加培養実験を行った。春から夏に向けて水温上昇に伴い表水層の硝酸イオンが減少するが、ラン藻量と植物プランクト体炭素窒素量が増加した。硝酸イオンの枯渇環境でラン藻が、高温環境下、有機物分解無機化で回帰する窒素を利用し増殖すると推察した。他方、栄養塩添加培養実験では、窒素添加はラン藻増殖に効果なく、高温とリン添加が有効であった。他方、緑藻には窒素添加が効果あり、珪藻には低温が促進的に働いた。 これら現場試料の解析と培養実験から、夏季の高温と硝酸イオン減少が、ラン藻の優占化に不可欠で、かつリン供給が促進的に働くことを示した。琵琶湖沿岸の湖水底泥生態系では、夏季の高温下、水中の硝酸イオン激減と底泥からのリン溶出促進があるが、これらの環境がラン藻の増殖を促進し、アオコの発生をもたらすと結論された。
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