研究課題/領域番号 |
11680539
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
東 久美子 国立極地研究所, 研究系, 助教授 (80202620)
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研究分担者 |
的場 澄人 北海道大学, 低温科学研究所, COE研究員
本山 秀明 国立極地研究所, 研究系, 助教授 (20210099)
藤井 理行 国立極地研究所, 北極圏環境研究センター, 教授 (20125214)
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キーワード | 雪氷コア解析 / 北極域 / 大気汚染物質 / 長距離輸送 |
研究概要 |
1.本年度はデボン氷帽において掘削した雪氷コアの10m深までについて、酸素同位体、イオン分析、重金属分析用のサンプルを切り出した。雪氷コアの保存状態が悪く、雪氷コアの表面付近が変質している可能性があったため、少しずつ表面を削りながらECM測定を行い、ECMのシグナルが正常に出るまで表面を削り落とした。このため、サンプルの切り出しに時間がかかった。また、低温室の床付近に保存されていた雪氷コアはコアの内部まで変質が進んでおり、コア中心部でも正常なECMシグナルが得られなかった。 2.グリーンランドの南部、中心部、北部コアにおいて掘削された多点雪氷コアのデータを用いて、過去200年間における硫酸濃度の変動傾向を比較した。南部では1890年頃から1900年頃にかけて一番激しい硫酸濃度の増加が見られた。これに対し、中心部と北部ではこの時期から硫酸濃度の増加が始まってはいるものの、一番激しい増加は1940年から1950年頃にかけて生じていた。1890年頃から1900年頃の硫酸濃度増加率と1940年頃から1950年頃の増加率を比較すると、後者の前者に対する比は、グリーンランドの北部へ行くほど大きくなることが分かった。これは、グリーンランドの北部は北米大陸東部の工業地帯よりもユーラシアの工業地帯から流れ込む汚染大気の影響を大きく受けるのに対して、南部は北米東部の工業地帯から流れ込む汚染大気の影響をより強く受けるためであると考えられる。 3.上記の多点雪氷コアにおける硝酸濃度の変動傾向を比較したところ、どの地点でも1940年頃から大きな増加が始まっていた。硫酸濃度の変動傾向にはグリーンランドの内部でも場所による相違が見られるのに対して、硝酸イオン濃度についてはこのような相違が見られないことが分かった。これは、硝酸の前駆物質であるNOx生成量の変動傾向がユーラシアと北米東部の工業地帯でほぼ同じ傾向を示しているためであると考えられる。
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