研究概要 |
提案した乱流輸送係数を求める方法を再録する。表面直上までの物質の鉛直濃度が測定出来れば分布の表面への外挿により表面直上での濃度勾配が求まる。表面直上での輸送係数は分子拡散係数であるから表面への物質流束が求まる。定常状態では物質流束は一定となるから乱流領域での濃度勾配から乱流輸送係数が求まる。現在入手可能な最も安定な素子としてH_2O濃度センサーを選択し、このセンサーを同時に8個測定するシステムを制作した。更に、多数の湿度センサーを同時に校正するためのチャンバーを制作した。このチャンバーは飽和水蒸気と乾燥空気を混合することによりH_2O濃度が調整出来る。これを用いて、センサー間の出力の器差を測定した。長時間での変動が特に問題となるので数日間の機差測定を行った。 前述した方法が正当か否かは十分大きなな流束を持った物質で乱流輸送観測を行い、それらの結果と比較検討する必要がある。出力に有為の差の見られなかったH_2O濃度センサーを用いて以下の2個所で観測を行った。a)中国・北京市でSO_2の乾性沈着をエアロダイナミカル法;b)長野県・大柴高原でO3の乾性沈着をエネルギー収支法。大芝高原では降雨のため湿度センサーによるH_2Oの鉛直濃度差は小さく、解析は北京市を優先して行っている。北京市にて0.24,1.16,2.46,4.06mの高さでSO_2(パルス蛍光法),および風速、温度、H_2O濃度をセンサーを用いて各々の鉛直分布を測定した。観測時の北京市の地表2mでのSO_2濃度は数十ppbであり、0.24mでのSO_2濃度差は数十ppbであった。風速とSO_2の鉛直分布が相似になった観測例で乱流輸送係数を計算し、これらの値からSO_2の地表面への流束を推定した。SO_2の鉛直分布と風速の鉛直分布は相似にならない多数の例が観測された。そこで、現在は定常状態と見なせる状態(風速とSO_2およびH_2Oの鉛直分布が相似になった観測例)でSO_2の流束とH_2O濃度鉛直分布との関係を検討している。
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