紫外線による皮膚癌誘発のリスクを評価するために、突然変異検出用トランスジェニックマウスを用いて、生体皮膚における紫外線誘発突然変異の解析を行った。 (1)UVB照射後、時間が経過するにつれマウス皮膚表皮・真皮における突然変異の誘発が認められ、一定時間後最大頻度に達したあとは、長期にわたってその値を維持した。 (2)0〜0.5kJ/m^2のUVB照射または0〜240kJ/m^2のUVA照射によりマウス皮膚表皮・真皮ともに線量依存的に突然変異の誘発が認められた。また0〜40分の正午前後の太陽光照射によりマウス皮膚表皮・真皮ともに照射時間依存的に突然変異の誘発が認められた。誘発効率はいずれの紫外線でも表皮の方が真皮より高かった。 (3)UVB・UVA・太陽光で誘発された突然変異によるDNAの塩基配列変化を解析したところ、いずれの場合でも、表皮・真皮ともにピリミジン塩基が連続した部位でのG:C→A:T変異が大部分を占め、またCC→TT二重塩基置換も検出され、紫外線に典型的な突然変異パターンとなった。また哺乳類細胞のDNAメチル化部位であるCpG配列にこれらの突然変異が高頻度に発生する傾向が見られ、CpGが紫外線誘発突然変異のホットスポットとなりうることが示された。 (4)UVBと太陽光は高線量域では突然変異頻度の飽和が見られたが、その飽和誘発頻度は太陽光がUVBよりも高かった。 (5)UVAにおける線量あたりの突然変異誘発効率はUVBのものよりも低かった。 (6)UVB・UVA・太陽光による皮膚炎症の誘発と突然変異誘発の関係を調べたところ、いずれも炎症が誘発されないような低い線量から突然変異は高頻度で誘発されていることが明らかとなった。
|