環境制御した培養液循環栽培装置内でムラサキツユクサBNL4430株(青/ピンクのヘテロ株)の若い花序をもつ根つきshootsを大量に育て、雄蕊毛におけるピンク色体細胞突然変異誘発頻度を指標として、異なる変異原間の相乗効果など相互作用とその機構の研究を行った。アルキル化剤である硫酸ジエチル(DES)がエックス線と明白な相乗効果を示すことを確かめ、さらにエックス線と明白な相乗効果を示すことがすでに判明していたエチルメタンスルホン酸(EMS)が、エックス線と加算効果しか示さないことがすでに判明していたN-メチル-N-ニトロソウレア(MNU)と、やはり加算的にしか働かないことを確かめた。DES、EMSとも、エックス線と同様に、DNA鎖や染色体をよく切断することが相乗効果を示す主因と考えられ、それに対してMNUがDNA鎖や染色体をあまり切断しないため、EMSと加算的にしか働かなかったものと考えられた。 また、エックス線照射後にマレイン酸ヒドラジド(MH)処理を行うと明白な相乗効果を、逆にMH処理後にエックス線照射を行うと相殺効果を示すことがすでに判明していたため、エックス線と類似の作用をするEMSによる処理をMH処理前およびMH処理後に行ったところ、予期に反していずれの場合にも相殺効果が見られ、とくにEMS処理をMH処理前に行った場合には、MH単独処理よりも有意に低い突然変異頻度が得られた。プロミュータジェンであるMHの活性にペルオキシダーゼがかかわっていることがすでに判明していたことから、EMSがこの酵素またはその前駆体をエチル化し不活化したものと推察された。
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