研究概要 |
環境制御した培養液循環(NSC)栽培装置内でムラサキツユクサBNL4430株(青/ピンクのへテロ株)の若い花序をもつ根つきshootsを大量に育て、雄蕊毛におけるピンク色体細胞突然変異誘発頻度を指標として、異なる変異原間の相互作用機構の研究を行った。 これまでに調査した単一作用型のアルキル化剤、メチルメタンスルホン酸(MMS)、硫酸ジメチル(DMS)、エチルメタンスルホン酸(EMS)、N-メチル-N-ニトロソウレア(MNU)、N-エチル-N-ニトロソウレア(ENU)のうち、MNUはX線と加算効果しか示さないが、他はすべてX線と明白な相乗効果を示し、X線との相乗効果とその現れ方がこれらアルキル化剤のSwain-Scott基質係数(s)、すなわちMMS:0.88、DMS:0.86、EMS:0.67、MNU:0.42、ENU:0.26と必ずしも一致していなかった。そこでやはり単一作用型のアルキル化剤である硫酸ジエチル(DES)とX線との相乗効果を調査したところ、明白な相乗効果が見られたものの、その現れ方は、やはりs値とは一致しなかった。また、MMSとEMSの間では明白な相乗効果が見られたのに対して、MNUとEMSは単に加算効果しか示さなかった。 一方、これまでに調査したプロミュータジェンのマレイン酸ヒドラジド(MH)、ο-フェニレンジアミン(PDA)、N-ニトロソジメチルアミン(DMN)のいずれもが、X線照射後処理では明白な相乗効果を示したに対して、処理後X線照射では相殺効果を示し、ペルオキシダーゼ活性が、前者では高まるのに対して、後者では抑えられ、この酵素がこれらプロミュータジェンの活性化に関与していることが判明していた。ただし、DMN、PDA、MH処理中X線照射は、それぞれ相乗、加算、相殺効果を示していた。今回調査したプロミュータジェンでありかつ二作用型のアルキル化剤である1,2-ジブロモエタン(EDB)処理中のX線照射は明白な相乗効果を示したが、MHとEMSは常に相殺効果を示した。 従来の結果と新たに得られた結果から、アルキル化剤、X線、および活性化されて変異原となるプロミュータジェンが、DNA鎖切断、染色体切断など少なくとも部分的に共通の作用機構をもつ場合に相乗効果が現れ、そうでない場合には加算効果のみとなり、プロミュータジェンの活性化が他の変異原で阻害されると相殺効果を示すものと考えられる。
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