研究課題
毛細血管拡張失調症(AT)とその亜系であるナイミーヘン症候群(NBS)は常染色体性劣性の遺伝子疾患であり、染色体異常、多発がん家系となることが知られており、それぞれ原因遺伝子が、ATM、NBSであることが判明している。また、最近新たな毛細血管拡張性失調症類似症(ATLD)の原因遺伝子がMRE11であることが判明した。これらの患者から樹立された細胞は大変類似した表現型を持つことが知られている。高頻度に相同組み換えをおこすトリB細胞、DT40を用いて樹立したMRE11欠損細胞を用いて、これらの機能を解析した。Mre11は細胞の増殖に必須であり、その欠損により致死となる際に染色体に断裂が観察されることによりゲノム・インテグリティーを保持するのに必要であると考えられた。さらに、我々は相同DNA組み換え機構が亢進しているDT40細胞を用いることによりMre11が非相同DNA組み換えよりもむしろ相同DNA組み換え機構に重要な役割を持ち、その欠損により染色体断裂が起きることを示した。このことにより、NBS,ATLDで観察される染色体不安定性は修復異常が原因の一つであるという可能性を示唆した。また、MRE11欠損細胞ではテロメアのG-strand overhangが正常細胞に比べて長くなる傾向が観察されたため、テロメア構造の維持にもMRE11の関与する相同DNA組み換え機構が関与している可能性が示唆された。ATM,NBS,ATLD細胞でテロメア構造の変化が観察されるかが興味を持たれる。また、MRE11がどのように染色体維持機構に関わるかを解明するため生化学的解析も重要である。
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