研究課題/領域番号 |
11680548
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
遠藤 暁 広島大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (90243609)
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研究分担者 |
星 正治 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 教授 (50099090)
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キーワード | Proton Track Code / Track Simulation / W value / Neutron Dosimetry / Recoil Particle |
研究概要 |
生物効果が大きくなる中速中性子線のエネルギー付与は、弾性錯乱によって生成される反跳陽子によってその90%が与えられる。反跳陽子のエネルギー分布は0エネルギーまでの連続分布となり、特に低エネルギーの成分が主である。従って、中性子線の生物影響を扱う際には、陽子線のトラック端(陽子線止まりぎわ)が大きく寄与する。しかしながら、この陽子のトラック端における陽子線の振る舞いはよく知られておらず、特に、反跳された陽子が生体物質中において電子を捕獲し中性の水素原子核に変わる効果は、これまで考慮されてこなかった。中性化した水素原子では電離を起こせないと指摘されており、水素原子がどのように生体内でエネルギーを付与して行くかは線量評価、線量測定にも重要な現象である。中性子線の生物影響研究の基礎として、陽子線のトラック端での現象を正しく理解し、低中速中性子線量測定法を確立することが本研究の目的である。 本研究年度においては、中性子線の線量評価への応用を行うために、生体組織中で反跳陽子の他に生成される反跳核のうち、炭素原子核に注目した。まず、放医研炭素ビームを用いてマイクロドシメトリスペクトルデータを収集し、解析した。このデータについてはRadiat. Prot. Dos.に掲載が決まり、現在印刷中である。このデータをシミュレートするためのイオントラックコードを作成にとりかかる予定である。また、近大原子炉を用いては、中性子エネルギースペクトルを決定し、このエネルギー情報を元に、中性子線量測定法に対する考察を行う。この一部はJpn. J. Appl. Phys.に受理され、現在印刷中である。
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