電離放射線などのストレスにより発現が誘導され、放射線誘導アポトーシスを増強する機能を持つZK1遺伝子産物のがん細胞における機能について以下の点を明らかにした。 1.ZK1遺伝子産物は導入した全ての細胞株(ヒト上顎がん由来の扁平上皮がん細胞株SCC-TF、子宮頚がん細胞株HeLaや白血病細胞株U937)において、その放射線感受性を数倍増加させた。 2.ZK1遺伝子産物は、放射線のみならずH_2O_2や温熱刺激などのストレスによる細胞死を増強させた。 3.U937細胞に抗腫瘍剤であるVP-16を曝露することによりZK1mRNAの発現が著しく誘導されることが明らかとなった。さらに、ZK1蛋白強制発現細胞は親株よりもVP-16に対して高い感受性を示した。 ZK1遺伝子は、電離放射線曝露だけでなく抗腫瘍剤であるVP-16曝露によっても発現が誘導され、さらに、電離放射線、温熱刺激、抗腫瘍剤という種々のストレスによる細胞死を増強させる働きがあることが明らかとなった。また、扁平上皮がんや白血病などがん細胞の種類を問わず同様の機能を持っていることが認められた。ZK1遺伝子産物はzinc finger型転写因子のモチーフを持ち、転写調節因子として働くことが推測される。U937細胞は種々のストレスに対してアポトーシスにより死に至ることが知られており、ZK1遺伝子産物の標的遺伝子はアポトーシスのシグナル伝達経路に働いている可能性がある。さらに、種々のストレスに対して同様の働きがあることから、アポトーシスのシグナル伝達経路より共通した部分に関与していることが推測された。今後、この標的遺伝子の同定を進めていく予定である。
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