研究概要 |
我々は、電離放射線曝露により発現上昇し、強制発現させた細胞において放射線誘導アポトーシスを増強させる作用を持つzinc finger型新規遺伝子ZK1をクローニングした(Katoh,O., et al BBRC,249:595-600,1998)。この放射線誘導アポトーシスを増強させる機能を持つZK1遺伝子、およびその遺伝子産物の機能について以下の点を明らかにした。 1.ZK1遺伝子産物は、導入した全ての細胞株(ヒト上顎がん由来の扁平上皮がん細胞株SCC-TF,子宮がん由来細胞株HeLa、卵巣がん由来細胞株MCAS、白血病細胞株U937)において、その放射線感受性を数倍以上増加させた。 2.ZK1遺伝子産物は、電離放射線のみならずH_2O_2や温熱刺激(42℃〉などのストレス、あるいは抗腫瘍剤であるVP-16やシスプラチンによる細胞死を増強させた。 3.ZK1蛋白が結合しうるDNA配列を同定するために、ZK1遺伝子を原核細胞発現ベクターpGEX-4T-1に導入し、リコンビナントGST-ZK1融合蛋白を作製し、任意の配列を持った20塩基をSL,KSプライマーにて挟み込んだオリゴヌクレオチドと結合させ、EMSA法を繰り返し行った。その結果、CCCAC等のGCリッチな配列に特に結合しうることが明らかになった。 ZK1遺伝子産物は、種々の刺激によるアポトーシスのシグナル伝達経路の共通する部分に働いている可能性が高い。また直接DNAと結合し、転写調節因子として働いている可能性が極めて高いので、今後は、アポトーシスのシグナル伝達経路に関与する標的遺伝子の同定を試みていく予定である。
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