研究概要 |
標題「活性酸素によって哺乳動物生体内で生じる遺伝毒性物質の排除機構」に沿って研究をすすめ、以下の述べるような成果を挙げることが出来た。 (1)8oxo-dGTPを特異的に分解する新たな酵素を哺乳動物細胞から検索するプロジェクトに関して以下の成果を得た。 1)MTH1ノックアウトマウスの肝臓からcDNA発現ライブラリーを構築した。 2)大腸菌のmutT変異を相補するcDNAクローンをスクリーニングし幾つかの候補を得た。 今後分離されるcDNAクローンを用い、そのcDNAがコードする蛋白が果たして、8oxo-dGTPase活性を有するかどうかを測定する予定。 (2)酸化型GTPのmRNAへの取り込み、およびその抑制機構の研究に関してのプロジェクトに関しては以下の成果を得た。 1)8-oxo-rGTPが、哺乳動物のRNA polymerase IIによってmRNAに取り込まれた酸化RNAが合成されていること(転写エラー)を明らかにした。 2)この様な転写エラーに対し、哺乳動物細胞は抑制するような機構を有していることを明らかにした。即ち、ヒトのMTH1蛋白は8-oxoGTPを8-oxoGMPに分解するとともに、Guanylate kinaseは分解産物である8-oxoGMPを再度リン酸化せず、酸化型ヌクレイチドは細胞外に排除されると考えられた。 3)酸化型リボヌクレオチドは酸化型のデオキシヌクレオチドになることはない。即ちリダクターゼは酸化型GDPを基質として還元反応を行なわない。 4)酸化RNAは酸化ヌクレイチドの誤った取り込みのみならず、細胞内のRNAの直接酸化によっても生じると考えられるが、最近申請者は酸化RNAに特異的に結合する因子をマウス組織から発見した。この因子が酸化RNAの排除に機能している可能性について現在解析を進めている。 なお、(1〜3)の成果についてはBiochemistry(1999)38,3610-3614.に報告した。
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