研究課題/領域番号 |
11680552
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
児玉 靖司 長崎大学, 薬学部, 助教授 (00195744)
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研究分担者 |
鈴木 啓司 長崎大学, 薬学部, 助手 (00196809)
渡邉 正己 長崎大学, 薬学部, 教授 (20111768)
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キーワード | 放射線 / 遅延型染色体異常 / 遺伝的不安定性 / scidマウス / 非相同末端結合修復 / テロメア / Telonomic instability / FBBサイクル |
研究概要 |
放射線被曝後の生存細胞に、遅延性に染色体異常が誘導されることが知られている。この現象は、放射線被曝後に誘起される遺伝的不安定性を反映しており、放射線発がんの重要な鍵を握る過程と考えられる。本研究は、放射線による遅延型染色体異常の形成メカニズムとして、放射線によりテロメア維持機能に一部破綻が生じ、それを起因とするテロメア不安定性(telonomic instability)がその形成に関与するという仮説について検証を試みるものである。scidマウス細胞は、DNA二重鎖切断の修復経路のうち、非相同末端結合修復に欠損を示す。そこで本研究では、まず、scidマウス由来細胞を用いて、DNA二重鎖切断の修復欠損が、放射線による遅延型染色体異常の誘発にどの様な影響を及ぼすのかについて調べた。その結果、scid突然変異は、自然発生、及び放射線による遅延型染色体異常の誘発頻度を増加させることが明らかになった。この結果は、非相同末端結合修復が、ケアテイカーとして自然発生および放射線による遺伝的不安定性の発生を抑制するように機能していることを示唆している。次に、telonomic instabilityについて、テロメア部分を特異的に染色するテロメアFISH法により調べたところ、放射線照射によりtelonomic instabilityが促進され、テロメア構造が残存した状態で2つの染色体が融合する染色体異常が増加することが分かった。さらに、scidマウス細胞で欠損しているプロテインキナーゼ触媒サブユニット(DNA-PKcs)が、テロメアの安定維持に寄与していることが示唆された。以上の結果を踏まえて、放射線による遅延型染色体異常の誘発メカニズムについて、telonomic instabilityを起因とする次の様なモデルを提唱する。すなわち、放射線被曝した細胞にtelonomic instabilityが誘発され、それを起因として、テロメア融合(fusion)-架橋形成(bridge)-染色体切断(breakage)と続く一連のFBBサイクルが誘起されることにより、遺伝的不安定性が持続的に生じ、遅延型染色体異常が形成されるというものである。
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