高LET放射線の相対的生物効果比による遺伝的影響評価

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11680553
• 研究機関: 長崎大学
• 研究代表者: 吉川 勲 長崎大学, 環境科学部, 教授 (80039528)
• 研究分担者: 高辻 俊宏 長崎大学, 環境科学部, 助教授 (70163219)
• キーワード: LET / RBE / 粒子線 / 中性子線 / 体細胞突然変異 / ショウジョウバエ

研究概要

研究の目的は、染色体突然変異と遺伝子突然変異を同一個体で調べることが可能なショウジョウバエの体細胞突然変異検出系を用いて、(1)高エネルギー加速器で加速された種々のエネルギーの炭素・ネオン・鉄の各高LET粒子線におけるLETとRBEの関係、(2)陽子加速器による単一エネルギー中性子のエネルギーとRBEの関係、を明らかにすることである。平成12年度は、11年度に引き続いて高LET粒子線について、また中性子についても実験・検討した。
炭素粒子(LET:約13keV/μm〜95keV/μm)の場合、X線と比較して、染色体組換え突然変異のRBEは、LETとともに大きくなり、最大のRBEは約7であった。しかし、遺伝子欠失の突然変異ではRBEは変わらなかった。また、ネオン粒子(LET:約60keV/μm〜200keV/μm)の場合、染色体組換え突然変異のRBEは,120keV/μm付近で最大値約8.5を示し、さらに、LETが大きくなるにつれてRBEが下がり、200keV/μmのところで約5となった。一方、遺伝子欠失突然変異のそれは、調べたLETの範囲でRBEが変わらなかった(≒1)。陽子加速器による単一エネルギー中性子のエネルギーとRBEの関係は、2MeV以下のエネルギーにおいてエネルギー依存性は見られなかった。しかし、RBEは染色体組換えによる突然変異では約20、2.9kb-DNA欠失による突然変異は、約6であった。このエネルギー領域の中性子の生物効果が重粒子線などに比べて大きいのか、あるいは、その他の要因が存在するのか検討している。

研究成果

• [文献書誌] Yoshikawa,I. et al.: "RBE-LET relationships of high-LET radiations in Drosophila mutations"Journal of Radiation on Research. 40(suppl.). 106-116 (1999)
• [文献書誌] Takatsuji,T.,Yoshikawa,I. et al.: "Generalized concept of the LET-RBE relationship of radiation-induced chromosome aberration and cell death"Journal of Radiation on Research. 40(1). 59-69 (1999)
• [文献書誌] Takada,J.,Yoshikawa,I. et al.: "External doses of residents near Semipalatinsk nuclear test site"Journal of Radiation Research. 40(4). 337-344 (1999)
• [文献書誌] Takatsuji,T.,Yoshikawa,I. et al.: "Relationship between the ^<137>Cs whole-body counting results and soil and food contamination in farms near Chernobyl"Health Physics. 78(1). 86-89 (2000)
• [文献書誌] 高辻俊宏,吉川勲 他: "重力要因と放射線の遺伝的相乗作用"Space Utilization Research. 16. 33-36 (2000)
• [文献書誌] 高辻俊宏,吉川勲 他: "放射線誘発突然変異に対する過重力の影響"Biological Science in Space. 14. 226-227 (2000)
• [文献書誌] Yoshikawa,Isao et al.: "Risk Evaluation of Cosmic-Ray Exposure in Long-Term Manned Space Mission"Kodansha Scientific (Tokyo, Japan). 187 (1999)
• [文献書誌] 高辻俊宏,吉川勲(分担執筆): "生体の電磁界とのかかわり:磁界と放射線の対比"電気学会(出版のための印刷準備中). (2000)