細胞に紫外線を照射すると、主要なDNA損傷としてシクロブタン型ダイマー(CPD)や(6-4)型ダイマー(6-4PP)が誘発される。昨年度の研究において、自ら樹立したDNA損傷特異抗体を共焦点レーザー顕微鏡法に応用することにより、損傷の生成・修復過程を個々の細胞レベルで3次元的に可視化することに成功した。本年度は、細胞核内へ限局的にDNA損傷を誘発する系を確立し、ヌクレオチド除去修復酵素が損傷部位に集結するかについて検討した。正常ヒト細胞および除去修復に欠陥を持つ遺伝病、色素性乾皮症A群患者由来細胞(XP-A)にポリカーボネート製フィルターマスク(孔径3μm)を通してC紫外線100J/m^2を照射することにより、細胞核あたり数個の小円状のDNA損傷部位の誘発を試みた。実際、この処置によりCPDも6-4PPも共に、マスクの穴の孔径や分布に一致する水玉様に免疫染色された。正常細胞は水玉様に誘発されたCPDを24時間で半分程度修復除去し、6-4PPを3時間以内で完全に修復したが、XP-A細胞は、同時間内に両損傷を全く修復できなかった。一方、正常細胞において、除去修復酵素であるPCNA(高分子に結合したもの)は照射後30分以内に核内に水玉様に染色されたが、9-24時間にかけて次第に染色が弱くなった。XP-A細胞では、逆に照射後3時間まで染色されなかったが、9および24時間において水玉様に染色された。以上の結果より、核内に限局的に誘発されたDNA損傷は、少なくとも照射後24時間は元の位置に留まり、核全体に照射された場合と類似の速度で修復されることが示唆された。さらに、正常細胞において、PCNAは紫外線照射に伴いDNA損傷部位に結合し、修復機構に欠陥があるXP-A細胞においても、照射後9時間以降に次第にDNA損傷部位に結合することが示唆された。
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