放射線ホルミシス;低線量放射線による生体内チオール系坑酸化物の誘導

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11680556
• 研究機関: 東京理科大学
• 研究代表者: 小島 周二 東京理科大学, 生命科学研究所, 助教授 (90119579)
• キーワード: 放射線ホルミシス / グルタチオン / マクロファージ様細胞 / mRNA / 放射線抵抗性 / 生体内坑酸化系

研究概要

まずはじめに、低線量γ線照射(50cGy)により賢著にグルタチオン(GHS)が誘導される細胞をスクリーニングした。その結果、マウス・マクロファージ様細胞(RAW264.7)およびチャイニーズハムスター・肺繊維芽様細胞(V79)に顕著なGSHの誘導がみられた。また、RAW細胞を用いて低線量γ線によるGSH誘導に関する線量依存性、経時変化および線量率効果を検討すると、25〜50cGyの線量域で、照射後3〜6時間および50cGy/min以上の線量率で有意なGSH誘導がみられた。GSH合成関連経路の律速酵素を制御スルmRNAsの発現を検討すると、GSH誘導はγ-Glutamylcysteine synthetase(γ-GCS)mRNAの誘導に伴うことが明らかとなった。
つぎに、これまで既に報告されている低線量放射線による放射線抵抗性の獲得をGSHと関連付けその機序の解明を試みた。細胞としてはRAW細胞を用い、細胞の高線量放射線によるDNA合成阻害に対する低線量放射線前照射(25cGy)の作用を細胞内GSH濃度の上昇と関連付け検討した。その結果、3〜6時間前の低線量のγ線照射により高線量γ線照射に対する抵抗性が認められた。また、外因性GSHの添加によっても、濃度依存的な放射線抵抗性がみられた。
以上の結果より、放射線ホルミシス現象への細胞内グルタチオンの関与が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] S.Kojima: "Elevation of antioxidant potency in the brain of mice by low-dose γ-ray irradiation and its effect on 1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahyropyridine(MPTP)-induced brain damage"Free Radic.Biol.Med.. 26. 388-395 (1999)
• [文献書誌] K.Yamaoka: "Changes of SOD-like substances in mouse organs after low-dose X-ray irradiation"Physiol.Chem.Phys.Med.NMR.. 31. 23-28 (1999)
• [文献書誌] K.Yamaoka: "Inhibitory effect of post low dose γ-ray irradiation on ferric-nitrilotriacetate-induced mice liver damage"Free Rad.Res.. (in press). (2000)
• [文献書誌] S.Kojima: "Elevantion of glutathione in RAW246.7 cells by low-dose γ-ray irradiation and its respossible for the appearance of radioresistance"Anticancer Res.. 20(in press). (2000)
• [文献書誌] 小島周二: "低線量放射線に対する生体の応答反応-坑酸化系の誘導とその疾患への応用の可能性-"衛生化学. 45. 133-143 (1999)
• [文献書誌] 山岡聖典: "低線量放射線の不思議な生体作用-ラドン温泉が効くわけを探る-"現代化学. 346. 24-30 (2000)
• [文献書誌] S.Kojima: "Induction of glutathione in mouse brain by low dose of γ-rays"Elsevier Science(in press). (2000)