研究概要 |
ダイオキシンの骨形成への影響と母体の性ホルモン濃度変化との関連性検討を目的に以下の実験を行った。 1.造骨系培養細胞株を用いたin vitroでの骨形成に対する2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(dioxin)の影響。骨芽細胞株MC4の細胞外Ca沈着物(nodule)の形成と骨形成マーカーであるalkaline phosphatase活性は、細胞増殖に影響を及ぼさない濃度(<10nM)のdioxinで用量依存的に抑制(EC50≒1nM、培養肝細胞でのCYP誘導濃度に相当)。nodule形成抑制作用の発現には培養前半期(成熟期)でのdioxin添加が必須であり、培養後期(石灰化期)のみの添加では観察されず、同様なnodule形成抑制は軟骨芽細胞株ATDC5でも観察された。 2.胎生期の軟骨形成に対するdioxinの影響。胎生16日齢のマウスより摘出した脛骨を用いた器官培養法で、dioxin(10nM)は脛骨の長軸方向への伸長に対し有意な抑制作用を確認。 3.成熟ラットの骨塩量に対するdioxinの影響。Dioxin(25μg/kg.p.o.)投与10日後、雌ラット脛骨近位端部の骨塩量の有意な低下が認められた。 4.超高分解能GC-MSを用いて、性ホルモンと代謝産物の高感度・高精度の一斉分別定量法(検出限界:estradiol=1pg/ml,progesterone=5pg/ml,testosterone=5pg/ml)を開発し、低用量のdioxin(0.25μg/kg.p.o.)投与ラットで血清estradiolとprogesterone値の上昇を、骨塩量減少用量のdioxin(25μg/kg.p.o.)投与で血清testosterone値の上昇を検出した。 Dioxinは造骨系細胞の成熟機構を阻害し骨形成に対して抑制作用を発現すること、また、胎生期でのdioxin暴露は骨成長に対し阻害効果を惹起する危険性を指摘。
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