研究概要 |
カドミウム(Cd)の毒性の指標として、Cdによる活性阻害を示す酵素のスクリーニングをしたところ、メタロチオネイン(MT)と同様に細胞質に存在する銅と亜鉛を含むスーパーオキサイドディスムターゼ(Cu,Zn-SOD)はCd濃度にしたがってその活性が阻害された。このようなCdによる阻害は精製品の場合と同様に、ラット肝可溶性画分中のSODにも認められた。さらに、急性毒性をおこさない1mg/kgの用量のCdを長期投与してもラット肝可溶性画分に存在するSOD活性には全く影響がなかったことから、細胞質に取り込まれたCdはほとんどMTに結合し、細胞質ではSODよりもMTの方がCdに対する親和性が高いことが示唆された。一方、Cd投与ラットの肝臓から結合金属がすべてCdであるMTを精製し、MTからのCdの解離をin vitroで試みたところ、過酸化水素によるthiol基の酸化ではMT結合Cdの100%が、また、MTに対する結合力がCdよりも強い銅(Cu)イオンをCdと等モル添加した場合では約50%が、それぞれCdの解離が認められた。しかし、MT部分の熱変性やカテプシンB添加による分解ではCdの解離はほとんど認められなかった。このようにMTから解離したCdのSOD活性への影響をみたところ、解離したCd濃度にしたがって、活性の阻害が認められ、MT変性に伴い、解離したCdが再び毒性を示すことが示唆された。また、初代肝細胞培養を用いた系では、過酸化水素やCu処理ではMT濃度が高いCd蓄積ラットの方がむしろ細胞傷害が軽減し、解離したCdによる毒性よりもMTによる防御作用が強く現れた。初代肝細胞培養を用いた系でのMTからのCd解離方法とその毒性発現の指標についてはさらに検討する必要があり、今年度の結果からSOD活性がCd毒性の指標となることから、赤血球を用いた系での毒性評価もさらに検討する。
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