デイファレンシャル-デイスプレイ法を用いて、マクロファージが微細球形粒子と繊維状粒子を貧食したときに異なる発現が見られる遺伝子を同定し、粒子状物質の吸入毒性発現機序を解明することを目的とし実験を行った。 SDラットから得た肺胞マクロファージをRPMI1640(10%FBS)中20時間前培養した後、最終濃度が100μg/mlとなるように微細球形酸化チタン(S-TiO2)あるいは繊維状酸化チタン(F-TiO2)を加えさらに3時間培養した。トリゾールを用いて肺胞マイクロファージより全RNAを抽出し、33pを用いたデイファレンシャル-デイスプレイを行い、F-TiO2を暴露した肺胞マイクロファージに特に強く発現するmRNAを調べた。ゲルより相当するバンドを切り出しPCRにて増幅の後、TAクローニングを行いシークエンスを行った。また、ノーザンハイブリダイゼーションにより、クローニングされたcDNAがデイファレンシャル-デイスプレイにて見いだされた変化に相当することを確認した。F-TiO2を貧食することにより発現する遺伝子が、肺胞マイクロファージの非特異的接着に由来するか否かを、カルチャーデイッシュに接着した肺胞マイクロファージから得た全RNAを用いてノーザンハイブリダイゼーションにより調べた。 シークエンス結果をホモロジー検索したところ、F-TiO2貧食時に肺胞マイクロファージに発現する遺伝子がラットkrox-20とほぼ一致した。またノーザンハイブリダイゼーション法を用いて、F-TiO2の貧食に伴いkrox-20の発現が上昇することを確認した。
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