本年度は、まず立地が進められた事例とそうでない事例を比較し、地域住民を含めた多様な主体間の対話に基づく施設立地のための意思決定システムに必要な要件を抽出することを試みた。具体的には、立地がなされた事例として新潟県出雲崎町、立地されなかった事例として宮城県白石市を対象に、情報提供、環境リスク、廃棄物処理や立地選定に対する考え方、関係主体への信用の4点から比較検討した。 その結果、以下の点が両者の共通性として挙げられる。情報提供に対する満足度はおおよそ類似しており、環境リスクについては、両者とも河川汚濁や飲料水の汚染への懸念に比べ、人体に対するリスク認知は低い傾向にあった。さらに、廃棄物処理の責任主体としては地方自治体に比べ国を重視しており、立地選定にあたっては、立地点の安全性が最優先で土地の確保可能性は低い優先順位となっていた。一方、国、県、市・町の順に信用度が増す傾向にあり、民間事業者に対する信用は行政に比べ、1ポイント程度低かった。これに対し、両者の相違点として以下の点が挙げられる。環境リスクに関しては、出雲崎の方がリスク発現の認知度が低いのに対し、白石では処分場による影響がより広い地域に及ぶと認識していた。また、廃棄物処理の責任主体として、出雲崎では排出事業者よりも産廃業者の責任を重くみるのに対し、白石では逆の結果であった。さらに、立地選定の基準として、出雲崎では廃棄物の発生量に対する応分の負担を求める意見が多いのに対し、白石では処分場の分散がより高い基準であった。 これらの結果をもとに、リスク認知を始めとする両者の違いを踏まえ、処分場立地がもたらす環境影響をできるだけ客観的かつ理解が容易な情報システムを考案し、モデル的なケースを用いて科学的情報が関係主体間の意思に基づく民主的決定プロセスに生かされるための意思決定支援システムの構築を試みた。
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