本研究では産業廃棄物の処分場立地を事例として、環境リスクを伴う施設の立地選定プロセスを民主性と科学性の観点から検討し、望ましい社会的意思決定手法を構築することを目的とした。「立地選定をめぐる地域住民の意識調査」では、宮城県と新潟県の各1市1町を対象として質問紙調査を行い、立地選定問題における地域住民の意識を把握した。その結果、白石では、自然環境から人体への影響に至る全ての環境リスクに対して、白石での回答が高いという大きな相違点があるものの、両地域とも人体への影響に対する確信度が他のリスクに比べ低下していたり、関連主体への信頼度はほぼ同様の結果であったなど、共通性も少なくなかった。また、国外の事例についてカナダを中心に取り上げ、合意形成に求められる課題を整理した。さらに、「既設の工場等におけるリスクコミュニケーション」では、施設立地の際に論争の主要課題となる環境リスクに関するコミュニケーションのあり方について、化学工場および産業廃棄物の中間処理施設を対象に、施設の地域住民に面接調査を行い、コミュニケーションの成果と課題を抽出した。最後に、「長野県における新たな立地選定プロセスの試み」では、「はじめに立地ありき」という従来の立地選定プロセスではなく、廃棄物問題の政策段階、すなわち廃棄物の減量化の可能性から検討を始め、廃棄物処理の計画を検討し、さらにやむを得ず処理・処分せざるを得ない廃棄物のための処理施設の立地を検討する国内では極めて意欲的なプロセスを紹介し、科学的な観点とともに、民主的な視点も踏まえた新しい立地選定プロセスを実現する可能性についてまとめた。
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