研究課題/領域番号 |
11680571
|
研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
上里 忠良 浜松医科大学, 医学部, 助教授 (40115465)
|
研究分担者 |
呉 一心 浜松医科大学, 医学部, 助手 (60283363)
佐藤 英二 浜松医科大学, 医学部, 助手 (70118751)
|
キーワード | 環境ホルモン / ライソソーム / V-ATPase / エンドサイトーシス |
研究概要 |
環境ホルモンの一つDEHPをマウスに投与すると、肝細胞において細胞内小器官であるペルオキシゾームの増加が報告されているが、我々はさらにライソソームの膜構成成分であるV-ATPaseの減少を見い出し、ライソソーム機能障害が結果的に他の小器官の増加を抑制できなくなったことを示唆した。通常、生体内の異物や病原性物質はまず細胞膜のエンドサイトーシスで取り込まれ、ファゴゾームから最終的にライソソームに運ばれ分解される。その分子的メカニズムを明らかにするために、とくに小胞の酸性化を担うV-ATPase(液胞型プロトン輸送体)の役割に着目した。DEHP投与によりV-ATPaseが顕著に減少することは細胞内消化機能の障害および小胞輸送ネットワークの撹乱が生じると思われる。しかしライソソームのマーカー酵素である酸性ホスファターゼの活性染色を電顕レベルで調べると、ロントロールとの差は見られない。またライソソームとファゴソームとの融合も観察された。このことはDEHP投与はライソソーム自身の形成および融合には影響を与えないことを示す。V-ATPaseが正常にライソソーム膜に局在化しないと、小胞内が酸性化せず、多くの加水分解酵素が活性化されない。V-ATPaseは進化的にも、単細胞生物から広く保存され、おそらく古代から細胞の直接的(エンドサイトーシスなど)な栄養素の摂取、貯蔵はもちろん、それに伴う異物や毒素の消化、解毒も担ってきたと思われる。事実、V-ATPaseは多くのサブユニットから構成され、種、あるいは組織によって多様な機能をもっている。本研究は環境ホルモンが細胞生命維持機構に与える影響を分子レベルで解明することである。
|