研究概要 |
塩素化ダイオキシン類と類似の構造を有し、毒性発現機構が同様であることが分かってきたコプラナーPCB-3,3',4,4'-tetraCB(IUPAC#77),3,3',4,4',5-pentaCB(#126),3,3',4,4',5,5'-hexaCB(#169)の3種をはじめ12種類のPCB異性体-は、製品PCBに含有されるにとどまらず、ダイオキシン類と同様に燃焼副生成物として存在することも分かってきた。こうした状況になってくると、環境挙動に対して、製品PCBの水系溶出・移動が主か、燃焼副生成による気系排出・移動が主たる寄与を与えるか、といった課題が学術的にも、社会的にも重要となってくる。そこで、本申請研究では湖底質のコプラナーPCB蓄積状況を、実際に底質採取、年代特定した試料を分析し、歴史トレンドとして把握することを第一の目的としている。そして、コプラナーPCBに関する発生源情報の文献サーベイ、資料収集を行い、底質試料の分析結果を合わせて、統計学手法としての主成分分析を適用し、発生源寄与推定を行うことを第二の目的としている。 平成11年度は、まず日本のバックグラウンド地域,琵琶湖,大阪湾の底質を対象にPCDDs/DFs及びPCBsの歴史トレンド解析を行った。PCDDs/DFsについて、琵琶湖,大阪湾では1960年頃から底質中濃度の増加が見られた。同族体・異性体分布の検討から、琵琶湖,大阪湾では燃焼発生源及びPCP・CNPなど化学薬剤による複合汚染であると考えられた。また、阪神淡路大震災時の火災によるPCDDs/DFs発生量を推定し、神戸沖底質への大気経由および水系経由の負荷量を検討した結果、大気経由の移動は少なく、水系による移動が主であると推定された。PCBsの濃度トレンドは、バックグラウンド地域では、PCBs,Co-PCBsともにコア全体としてはほぼ一定の濃度を示したが、表層部においては濃度増加が認められた。琵琶湖南湖,淀川沖,ポートアイランド西など工業地帯周辺では底質中濃度のピーク時期とPCBs製品の生産・使用時期の一致が見られた。
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