研究概要 |
宍道湖を代表する生物であるヤマトシジミが1997年夏季に大量斃死し、漁業被害とともに環境へも大きな影響を与えた。大量斃死の直接的原因としては、台風により巻き上げられた浮泥によるエラ詰まりとされた。しかしながら、ヤマトシジミは本来取り込んだ懸濁物を排泄する高い能力があるところから、間接的には抵抗力の低下した状況に置かれたことが原因と考えられた。 そこで、本研究ではヤマトシジミの生息密度を変化させ、宍道湖と中海を結ぶ大橋川において浸漬実験を行った。生息密度は宍道湖における平均的生息密度であった1500個体/m^2を中心に、100,2000,3000及び4000個体/m^2とした。浸漬は8月はじめから開始し10月末まで毎週1回サンプリングを行った。 調査の結果、生息密度が高まると斃死率は上昇し、3000個体/m^2以上の密度では環境状況が悪化したときには容易に斃死する事が明らかになった。また、生息密度を高めると1個体当たりのろ過速度は低下し、軟体部重量も減少することが分かった。水温によっても耐性は変化し、生息環境が20℃以下になると、貧酸素耐性が著しく上昇し、25℃以上になると斃死が起きやすくなることが分かった。
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