研究概要 |
本研究は、環境指標生物としての珪藻の有用性に着目し、縄文時代の干潟と現存干潟の比較研究から、干潟の環境特性を地史的な観点から考察することを目的とする。そのために、縄文海進時以降の堆積環境に関する資料を収集し、縄文干潟を特徴づける環境指標種の出現及び分布を明らかにする。それと並行して、現存干潟に生息する珪藻群集を調査し、縄文干潟を特徴づける環境指標種の現在における分布と生息状況を明らかにする。一方、現在は地球温暖化に伴う海面上昇が海岸低地を水没させる危機的事態が憂慮されている。縄文時代はまさに後氷期の海面上昇期でもあり、当時の海面変動史を明らかにすることは、ミレニアル・スケールにおける近未来の地域環境変動の予測に極めて有用と考える。 以上の観点から、平成11年度は、北海道オホーツク海沿岸の湿地帯において、ピートサンプラーによるコア堆積物の採取と現存干潟の表泥堆積物の採取を行った。また、縄文干潟と海面変動史の調査として、兵庫県・神戸市西部沿岸における資料を整理する一方で、兵庫県・播磨平野東部(高砂市)と赤穂平野(赤穂市)において機械ボーリングによるコア堆積物の採取を実施した。両地点においては、縄文海進時の干潟堆積物をカバーする約7mのコアを採取した。さらに、高砂市においては、遺跡堆積土を採取し、堆積物中に含まれる植物片の^<14>C年代測定および堆積物中の珪藻遺骸群集の分析から、堆積土が約6,000年前の縄文海進ピーク時の干潟堆積物からなることを明らかにした。堆積土の分布高度から、播磨平野東部・高砂における縄文海進ピーク時の海面高度は標高約1mと推定される。
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