遺伝子形質の自然伝播を利用する環境浄化微生物の分子育種技術の開発に関する研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11680580
• 研究機関: 東北学院大学
• 研究代表者: 遠藤 銀朗 東北学院大学, 工学部, 教授 (80194033)
• キーワード: 水銀耐性遺伝子 / クラスIIトランスポゾン / 接合伝達 / 水平伝播 / 環境浄化

研究概要

本研究の初年度である平成11年度は以下の課題について研究を実施した。
(1)細菌の水銀耐性遺伝子オペロンコードする伝達媒体の同定。
(2)プラスミドによる接合伝達性、既知のトランスポゾンとの関連性、および新規な接合性トランスポゾン(conjugative transposon)を含む可能性などの解明。
(3)自然界における細菌間での水銀耐性オペロン伝播のメカニズムの解明。
これらの課題について、平成11年度に得られた研究の成果は以下の通りである。
(1)既分離の嫌気性水銀耐性細菌においても新たに分離できた好気性水銀耐性細菌においても、水銀耐性遺伝子オペロンはClassIIトランスポゾン上にコードされていることが明らかになった。
(2)上記トランスポゾンは分離できた何れの水銀耐性細菌においても染色体上に存在することを明らかにした。また、このトランスポゾンの内部には細菌型イントロンがコードされており、遺伝子の広範囲な伝播に何らかの関与をしていることが示唆された。
(3)プラスミドによる接合伝達・既知のトランスポゾンによる伝達との関連性、および新規な接合性トランスポゾン(conjugative transposon)を含む可能性などを明らかにするために、水銀耐性オペロンを含む被伝達領域のDNAの塩基配列を決定した。
(4)水銀耐性オペロンが自然界でどのようにして他種の細菌に伝播されるかについて、水銀耐性遺伝子を持たない複数の細菌保存株との組み合わせによる、メーティング実験を現在手がけており、実際の耐性遺伝子の伝播のメカニズムを解明するための研究を開始した。

研究成果

• [文献書誌] M.Narita,C.C.Huang and G.Endo: "Molecular analysis of merA gene possessed by anaerobic mercury-resistant bacteria isolated from Minamata Bay"Microbes and Environments. 14・2. 77-84 (1999)
• [文献書誌] C.C.Huang,M.Narita,T.Yamagata,Y.Itoh and G.Endo: "Structure analysis of a class II transposon encoding mercury resistance of Gram-positive bacterium,Bacillus megaterium MB1,a strain isolated -"Gene. 234. 361-369 (1999)
• [文献書誌] C.C.Huang,M.Narita,T.Yamagata and G.Endo: "Identification of three merB genes and characterization of a broad-Spectrum mercury resistance module encoded by a class II transposon of -"Gene. 239. 361-366 (1999)
• [文献書誌] M.Narita,C.C.Huang,T.Koizumi,T.Yamagata and G.Endo: "Characteristics of anaerobic mercury-resistant bacteria isolated from mercury-polluted sediment"Proceedings of 7th IAWQ Asia-Pacific Regional Conference. 1. 310-315 (1999)
• [文献書誌] 成田勝,黄介辰,小泉卓哉,山肩健史 遠藤銀朗: "絶対嫌気性細菌Clostridium属における水銀耐性遺伝子の普遍的保有と重金属耐性スペクトラムの評価に関する研究"環境工学研究論文集. 36. 29-37
• [文献書誌] 山肩健史,黄介辰,成田勝,遠藤銀朗: "グラム陽性細菌Bacillus megaterium MB1株が持つ新規有機水銀耐性オペロンの同定と有機水銀分解遺伝子の機能解析"環境工学研究論文集. 36. 39-47 (1999)