抽水植物であるヨシの根の近傍は、地上部からの植物体を通しての酸素の供給により微好気的に環境になっており、この微好気部分における硝化とその外側での脱窒による窒素変化が水中の窒素除去に大きく寄与できるものと考えられ、公共用水域の水質保全技術のひとつとして注目されている。本研究では、これを効率よく行うための手法の確立を目指して、ヨシ根圏の微視的な環境における窒素変換のメカニズムについて、実験やモデル解析により検討を行うことにしている。そこで、今年度は、室内実験として、ヨシを水耕状態で植栽した実験系と湖沼底質土壌に植栽した実験系を用いて、根圏の酸化還元電位が窒素変換に及ぼす影響を把握することにした。 福島県いわき市にある二級河川弁天川河口域から採取したヨシの種子を発芽させて、実験カラムに水耕状態で植栽した。発芽率は70%を超えていたが、実験期間中の生育は高さが5cm以下であり、根圏へのDO供給や各態窒素濃度の実測するまでには至らなかった。しかしながら、根圏における若干のTOC濃度の増加が見られ、根近傍への有機物のわずかな供給が観測された。尚、この水耕植栽実験系は現在も継続実験中であり、ヨシの成長に合わせて実験を行う予定である。 一方、富栄養湖沼である賢沼の底質土壌を実験カラムに充填し、これに発芽させたヨシを植栽した。水耕植栽系よりも栄養条件が良いために成長は早かったが、高さはまだ8cmであり根の生育も十分ではなく、土壌中のORPの分布に特徴は見られなかった。今後ヨシの成長に合わせて実験を継続する予定である。
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