抽水植物であるヨシの根の近傍は、植物体を通して地上部からの酸素供給が行われるために微好気的に環境になっており、ここでは硝化と脱窒による窒素変換が土壌間隙水中の窒素除去に大きく寄与できるものと考えられ、公共用水域の水質保全技術のひとつとして注目されている。 本研究では、ヨシ植栽により水域の栄養塩類除去を効率良く行う手法の確立を目指して、ヨシ根圏の微視的な環境における窒素変換のメカニズムについて検討を行った。 ヨシ根圏には地上部からの酸素供給が行われ、土壌中の酸化還元電位(ORP)は0〜1100mVを示し、植栽をしていない土壌中の-1700〜-300mVに比べて、次第に微好気的環境が形成されることが示された。植栽系では、昼間はDO消費、夜間はDOの供給がそれぞれ卓越しながらも、経日的には根圏の微好気環境が形成されることが明らかとなった。 ヨシを植栽していない湛水土壌中では、有機物の分解に伴いアンモニア態窒素が蓄積するだけで窒素の低減化はほとんど期待できないが、ヨシ植栽土壌中では、植物体によるアンモニア態窒素の摂取に加えて、土壌中への酸素供給による硝化、脱窒に伴う窒素の減少が顕著に起こっていることが確認された。その際、植物体へのアンモニア態窒素の取り込みは昼間に起こること、植物活性によってもたらされる根圏の好気・嫌気条件の微妙な違いは、根圏の脱窒特性に影響を及ぼし、ひいては窒素除去特性の違いとなって現れることが示された。
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