研究概要 |
ピロロイミノキノン型海洋アルカロイドはDNAトポイソメラーゼ阻害を作用機序とする抗腫瘍活性を示し、新規抗がん剤開発のためのリード化合物として注目を集めている。筆者らは科学研究費補助金の援助の下に、新規なピロロイミノキノン骨格の構築法ならびに抗がん活性に重要な影響を与えると期待されるピロロイミノキノン骨格6位への官能基導入法の開発に成功した。さらにこれらの方法論を活用しピロロイミノキノン型海洋アルカロイド、makaluvamineA,D,I,Kおよびveiutamineの全合成に成功している。 平成12年度においては、古典的な合成手法を用いることにより、実用的で大量合成が可能なピロロイミノキノン骨格構築法の開発を試みた。すなわち、安価なバニリンを出発原料として、アセチル化、位置特異的ニトロ化、加水分解、脱メチル化、ベンジル化、ニトロメタンとの縮合-脱水、鉄粉によるニトロ基の還元-環化により6,7-dibenzyloxyindoleを合成した。この段階までは、カテコールタイプの水酸基のジベンジル化に収率面で問題が認められたが、tetrabutylammonium iodideを共存させることにより解決されることが判明した。その他は問題なく、6,7-dibennzyloxyindoleの大量合成は可能であった。 さらにMannich反応、シアノ化によりindole-3-acetonitrile体を高収率合成した。次に水素化アルミニウムリチウムによりトリプタミン誘導体への還元を試みたところ、予想外に7位ベンジル基の加水素分解が起こり目的物の収率は、40%程度であった。続いて、6,7位ベンジル基のPd触媒による脱保護と空気酸化によるindole-6,7-quinoneの生成、それに続く側鎖エチルアミノ基の4位炭素への共役不可によるpyrroloiminoquinone骨格の構築を試みたが、目的物1,3,4,5,7,8-hexahydropyrrolo[4,3,2-de]quinolin-7,8-dioneは6%の収率で得られたのみであった。今後、最終段階の環化の収率改善し、実用的合成経路を確立する必要がある。
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