研究概要 |
1.ブレファリズマの接合誘導物質ガモン1(ブレファルモン)の構造 繊毛虫Blepharisma japonicumには接合型細胞I, IIが存在し、貧栄養状態になるとそれぞれの細胞が接合誘導物質ガモン1,2を放出し相補的細胞に作用することで、I型とII型細胞が接合し有性生殖過程に入る。接合型細胞Iが放出するガモン1(ブレファルモン)は糖タンパクであり272のアミノ酸からなる全アミノ酸配列を決定した。分子量が30kDaに変更になったことから、各種レクチンへの親和性の結果と糖鎖の生合成を考慮し、N-アセチルグルコサミン4、マンノース3からなるアスパラギンN-結合型糖鎖構造(GlcNAcβ1->2Manα1->3), (GlcNAcβ1->2Manα1->6)Manβ1->4GlcNAc-β1->4GlcNAcβ1->Asnを新しく推定している。ガモン1のアミノ酸配列から糖鎖の結合位置は4カ所まで可能であるが、糖鎖の質量比は分子量の5%と定量されていることを考慮すると、ガモン1には、この糖鎖構造が1つ結合していることになる。糖鎖の数と結合位置を確定するべく、MSスペクトルの解析及び推定糖鎖の合成を検討した。糖鎖合成に必要な単糖および二糖の合成を完了し、収斂的合成法で目的の七糖に導くことを検討した。 2.ブレファリズマの接合誘導物質ガモン2(ブレファリズモン)の受容体探索 繊毛虫Blepharisma japonicumの接合型細胞IIが分泌するガモン2の受容体を見いだすことを目的に光親和性標識体を分子設計しその合成を検討した。今回予備実験として、すでに開発した効率的なブレファリズモン合成法を基盤に、光親和性標識体のモデル化合物N-ベンゾイルブレファリズモンを新たに合成し、接合型細胞Iを用いその生物活性を検討した。予期したとおり接合誘導活性は全く認められなかったが、接合誘導阻害活性を確認した。
|