これまでの研究成果をもとに、メソ位にフッ素やペルフルオロアルキル基を有するポルフィリンおよびポルフィリン誘導体の新規合成法の開発、それらの化合物の物理化学的性質、立体構造、分子軌道に関する研究、触媒としての有用性などを検討することを目的として研究を進めた。その結果、以下のことが明らかになった。 (1)ピロールから出発して3段階で4つの全てのメソ位にトリフルオロメチル基を有するポルフィリン1を合成することができた。 (2)OEPとトリフルオロヨードメタンの光化学反応により、メソ位に1つだけトリフルオロメチル基を有するポルフィリン5を選択的に合成することができた。 (3)OECとトリフルオロヨードメタンの光化学反応により、δ位にトリフルオロメチル基が1つ導入されたクロリン6を選択的に合成することができた。 (4)天然型非対称ポルフィリンであるMeso-IX-DMEとトリフルオロヨードメタンの光化学反応により、トリフルオロメチル基のメソ位一置換体である4つのポルフィリン位置異性体9〜12の混合物が得られた。 (5)酸化還元電位の測定および分子軌道のエネルギー計算により、電子吸引基であるトリフルオロメチル基の影響でポルフィリン1、5およびクロリン6のHOMOとLUMO双方が非常に安定化していることがわかった。 (6)ポルフィリン5はLUMOがHOMOに比べてより安定化しており、メソ位のトリフルオロメチル基とβ位のエチル基との相互作用により、ポルフィリン環がかなり歪んでいることがわかった。一方、ポルフィリン1は、HOMOとLUMOの安定化の割合がほとんど変わらず、ポルフィリン環に大きな歪みは無く、ほぼ平面構造であることもわかった。
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