1.抗MRSA剤アミノグリコシド(AG)であるアルベカシン(ABK)がアセチル(Ac)化されても活性を維持することから、昨年度は3種のAc化酵素(AAC)を用いて3通りの組み合わせで2種のAACによるジアセチル(diAc)化の難易を検討したが、今年度は3通りの組み合わせでクローン化した2種のAc化遺伝子(aac)をもつ菌株を用いて各種AGに対する耐性とAc化活性を検討した。その結果、以下のことが得られた。 1)aac(2')+aac(3)の組合わせでは、2'-N-Ac化のみが顕著でdiAc化はほとんど進行せず、保持菌はABK感受性である。 2)aac(2')+aac(6')の組み合わせでは、2'-N-Ac化が先行してからジアセチル化が進行し、aac(6')単独クローン株と同レベルのABK耐性を示す。 3)aac(3)+aac(6')の組み合わせでは、diAC化がもっとも速く進行するが、ABK耐性はaac(6')単独クローン株と同レベルにとどまる。 2.14種のAGのAc化物の抗菌活性を調べ、ABK以外にも6'-N-Ac化Neomycin(NM)等に活性を見出した。 3.クローン化したAAC(2')およびAAC(6')の塩基配列を決定し、アミノ酸レベルにおける既知AACとの類似性を認めるとともに特異性も明らかにした。 4.MRSA(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus)の薬剤耐性遺伝子を迅速に検出するコロニーPCR法を確立し、臨床分離MRSA株にはAG耐性因子としてaac(6')/aph(2")が約50%の頻度で存在することを認めた。それらはAG多剤耐性を示すが、ABKに関しては特異的に感受性か低レベルの耐性であり、この酵素による修飾は6'-N-Ac化が主で、2"-O-リン酸化は弱いことが認められた。 以上のことから、Ac化物が活性を維持するかどうかは、ABKとAmikacin、NMとParomomycinといった構造酷似物質の比較により、化合物のアミノ基の数が重要なことが浮かび上がった。
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