表題の研究のために、酵母由来のACC deaminase変異体の調製を行った。まず、PCR法を用いて、活性部位に直接関与していると推定されるLys51、Asn79及びLys54をAlaに置換して(K51A、N79A、K54A)発現を試みた。その結果、K51Aの変異体は発現しなかった。K54Aの変異体は発現したが、可溶化する事ができなかった。N79Aの変異体については発現と可溶化が成功し、その変異体は酵素の活性を失うことが確認できた。これは構造からの推定と一致している。しかし、N79Aの変異体は非常に不安定で、精製は困難である。一方、バクテリア由来のACC deaminase変異体(K51A、K51T、K51Q、K51R、K54A、K54N、K54R、K54Q)については調製が成功したので、バクテリア由来ACC deaminaseのネイティブの構造解析を先に進めた。 バクテリア由来のACC deaminaseは、酵母由来のACC deaminaseと1次構造のホモロジーが60%あり、同等な活性を持っている。また、大腸菌での大量発現と大量精製法も既に確立している。さらに私達は、この蛋白質の結晶化に成功した。X線回折データ測定は、実験室用の回折装置DIP-R300、PF及びSPring-8のシンクロトロン放射光を用いて行った結果、分解能2.6Aのデータを得られた。構造解析には、私達が既に解析した酵母由来のACC deaminaseをモデルとして分子置換法を適用している。しかし、反応機構を解明するためには、2.6Aの分解能では不充分であると考えられるので、現在、結晶の改良も同時に行っている。 一方、酵母由来のACC deaminaseと基質或いは基質類似体との複合体の結晶化を試みた結果、結晶化に使われている緩衝液及び沈殿剤が基質の競争剤として働いていることが判明した。したがって、現在、他の結晶化条件を探索中である。
|