昨年度得られたモノクロナル抗体の抗原脂質はスフィンゴ糖脂質と考えられる。そこで、スフィンゴ糖脂質やコレステロールが極在すると考えられている脂質ラフトに注目し、本脂質の分布を詳細に検討したところ、その略全量がこの分画に局在している事を解明した。本研究で使用〓ている神経芽腫細胞はBrdUで処理するとシュワン細胞に、また培地中の血清を除去する事によって神経細胞に分化する事が知られて居る。この何れの処理によっても細胞表面の抗原脂質がモノクロナル抗体と反応しにくくなる事を解明した。ところでFACS解析において、このモノクロナル抗体は神経芽腫細胞の表面のみを認識し、他の調べた限りの細胞は殆ど認識しない事を明らかにしたが、脂質をこれらの細胞から抽出してTLCブロッティングを行うと、神経芽腫細胞同様に検出される事を明らかにした。またシュワン細胞および神経細胞に分化誘導させた後にも、FACS解析においてはネガティブになるものの本脂質は細胞内部には存在することを確認した。しかも何れにおいても脂質ラフト中に局在する事を明らかにした。これらの結果は、脂質ラフトは細胞表面および内部に存在する事を示唆している。 ところで、上記の脂質を抗原とするものとは対照的に、他に何れの細胞もFACS解析によって認識するが、神経芽腫細胞のみは認識しないモノクロナル抗体を発見し、その抗原がCD44と言う糖タンパク質である事を解明した。次いで、神経芽腫細胞をシュワン細胞に分化誘導した際にのみこの分子が発現される事も明らかにした。またこの分子にはalternative splicingに由来する多数のアイソフォームが存在するが、新たに発現されるものの分子構造をRT-PCR法によって解明した。さらに、この分子も分化によって得られたシュワン細胞においては、脂質ラフトに局在する事を解明した。
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