本研究で我々は、LPSに対して非感受性のHEK293細胞に遺伝子導入実験を行い、過剰発現したTLR4はNF-κBの構成的活性化を引き起こすものの、適当な条件下では、TLR4の一過性発現により、LPS刺激依存的なNF-κBの活性化が惹起されることを見い出した。今回確立した一過性発現系によってTLR2とTLR4のLPS応答反応に対する機能を直接比較することが可能になった。 TLR2/4の変異体を野生型のTLRと共発現すると、それぞれの野生型TLRのLPS応答を抑制したが、異なるタイプのTLRの反応には影響を与えず、2種の受容体は独立に細胞を刺激していることが明らかになった。両者のLPSに対する感度を調べたところ、TLR4はTLR2に比べ、LPSに対して10-100倍高い感受性を示した。用いた市販のLPS標品中に含まれている可能性のある微量のcontaminantを除くため、さらに精製を行ったところ、再精製を行ったLPS標品はTLR4のみを刺激し、TLR2に対する活性は完全に消失した。また、合成lipid Aを用いて刺激したところ、TLR4のみに応答がみられ、TLR2は全く反応しなかった。市販のLPS標品を用い、TLR2/4の活性化をさらに検討したところ、TLR2/4共に、LPSに対する応答にはCD14とLPS-binding protein(LBP)を要求し、lipid A中和能をもつpolymyxin BによりTLR2/4双方のLPSによる反応は抑制された。以上の結果より、TLR4はlipid Aのみで活性化されるが、TLR2はグラム陰性菌に由来するlipid Aとなんらかの物質の複合体を認識して活性化しているものと考えられた。 また、本研究の過程で、LPS刺激時にマクロファージにおいて発現誘導される分子の探索を行い、炎症反応の抑制に機能すると考えられる興味ある新規分子を同定した。
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