研究概要 |
グルタミン酸受容体(GluR)δサブユニッットファミリーはその分子機能や細胞内シグナル伝達機構については、ほとんど未知である。我々は、そのPDZドメインを介して、GluRδ2サブユニットのC末端に結合する新規PDZ蛋白質を見出し"Delphilin"(dalta2 philic protein)(申請書類の"δ2SIP"を改名)と命名した。Delphilin/δ2SIPのPDZドメインの結合様式の解析は、PDZドメインのターゲット認識様式を研究する上でもよいモデルであると考え、様々な変異体を作製し、酵母two-hybrid systemや、BIAcoreを用いたsurface plasmon resonance法等も用いて検討した(第22回分子生物学会年会講演要旨集 p.472)。まず、DelphilinのPDZドメインが,GluRδ2サブユニットのC末端を、直接、認識し、結合していることを証明するために、DelphilinのPDZドメインだけを発現するconstructを作製し、酵母two-hybrid systemやsurface plasmon resonanceを用いて更に検討し、DelphilinのPDZドメインはGluRδ2サブユニットのC末端を直接、認識し結合することを確認した。 しかるに、酵母two-hybrid systemの系で、DelphilinのPDZドメインは、PDZドメインだけよりも、周辺領域を含むほうが,そのターゲトとなるGluRδ2サブユニットのC末端と、より高い親和性をもつ可能性、及びDelphilinのアミノ酸残基227-352の領域がそのPDZ-GluRδ2C末端の結合に、負の作用を及ぼしている可能性などが示唆された。更に、コンピュータによる検索を行ったところ、結合に正または負の作用を及ぼす可能性の示唆された、それらの領域に、結合を強化または阻害する可能性を持ちうるような、何らかの既知のドメインなどは、見当たらなかった。DelphilinのPDZドメインへの結合を介して、GluRδ2サブユニットがどのような生理的機能を果たしているのかを、in vitroおよびin vivoの系を用いて、更に、解明していく予定である。
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