我々は、そのPDZドメインを介して、GluRδ2サブユニットのC末端に結合する新規PDZ蛋白質を見出し"Delphilin"(delta2philic protein)(申請書類の"δ2SIP"を改名)と命名し、その機能的解析などを進めつつある。グルタミン酸受容体の他のタイプで、そのC末端Ser、Thrのリン酸化によって、PDZドメインとの結合が妨げられるという報告があり、δ2のC末端の各々-2位、-1位に存在するThr、Serがリ酸化されることによって、DelphilinのPDZドメインとの結合が調節され得る可能性を考え、BIAcoreを用いたsurface plasmon resonance法により、解析、検討した。δ2サブユニットの-1位のSer、-2位のThrをリン酸化したペプチドをリガンドとすると、いずれもGST-DelphilinPDZとの相互作用が著しく減少した。さらに、この相互作用の阻害効果を確認するために、競合実験をおこなった。リガンドとしてδ2ペプチドを固定化したセンサーチップに、GST-DelphilinPDZにδ2ペプチド、δ2-pTペプチド、あるいはδ2-pSペプチドをそれぞれ添加した溶液を、アナライトとしてマイクロ流路系に流したところ、δ2ペプチド添加時のみ著しい競合阻害が起こった。以上によって、δ2ペプチドのC末端のSer(-1位)、あるいはThr(-2位)のリン酸化によって、DelphilinのPDZドメインとの相互作用が失われたことが確かめられた。リン酸化ペプチドを用いた実験結果から、生体内で実際にδ2サブユニットC末端のSer、あるいはThrがリン酸化されうるならば、Delphilinとの相互作用が非常に弱くなることが示唆された。
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