研究概要 |
グルタミン酸受容体(GluR)δサブユニッットファミリーはその分子機能や細胞内シグナル伝達機構については、ほとんど未知である。我々は、そのPDZドメインを介して、GluRδ2サブユニットのC末端に結合する新規PDZ蛋白質を見出し"Delphilin"(delta2 philic protein)(申請書類の"δ2SIP"を改名;GenBank accession # AA869045)と命名した。Delphilin/δ2SIPのPDZドメインの結合様式の解析は、PDZドメインのターゲット認識様式を研究する上でもよいモデルであると考え、様々な変異体を作製し、酵母two-hybrid systemや、BIAcoreを用いたsurface plasmon resonance法等も用いて検討した。まず、DelphilinのPDZドメインが,GluRδ2サブユニットのC末端を、直接、認識し、結合していることを証明するために、DelphilinのPDZドメインだけを発現するconstructを作製し、酵母two-hybrid systemやsurface plasmon resonanceを用いて更に検討し、DelphilinのPDZドメインはGluRδ2サブユニットのC末端を直接、認識し結合することを確認した。しかるに、酵母two-hybrid systemの系で、DelphilinのPDZドメインは、PDZドメインだけよりも、周辺領域を含むほうが,そのターゲットとなるGluRδ2サブユニットのC末端と、より高い親和性をもつ可能性、及び、Delphilinのアミノ酸残基227-352の領域がそのPDZ-GluRδ2C末端の結合に、負の作用を及ぼしている可能性などが示唆された。一方、δ2のC末端の各々-2位、-1位に存在するThr、Serがリ酸化されることによって、DelphilinのPDZドメインとの結合が調節され得る可能性を考え、BlAcoreを用いたsurface plasmon resonance法により、解析、検討し、δ2ペプチドのC末端のSer(-1位)、あるいはThr(-2位)のリン酸化によって、DelphilinのPDZドメインとの相互作用が失われたことが確かめられ、δ2サブユニットC末端のSer、Thrのリン酸化により、Delphilinとの相互作用が非常に弱くなることが示唆された。
|