T細胞の活性化に対して抑制的に働く因子であるヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRG)のT細胞表層にある受容体の単離、精製を行った。受容体含量は非常に低いことが予想されたため、精製にはヒト血液ではなく材料が得やすいウシ血液を使用し、まずT細胞を含む白血球層を大量に効率良く分離する方法を検討した。次に、調製した白血球を凍結・融解により破砕し、分画遠心により膜標品を得て、Triton X-100を用いて受容体を含む膜タンパク質を可溶化した。これを、ウシHRGまたはプラスミン処理したウシHRGを固定化したアガロースを充填したカラムに通して結合タンパク質を分離した。それぞれのカラムには、異なった種類のタンパク質が結合していた。それぞれの分画はまだ多数のタンパク質を含んでおり、イオン交換クロマトグラフィーやゲルろ過により精製を進めている。各タンパク質のHRGへの結合特性は、各タンパク質とビオチン化したHRGとの結合をストレプトアビジンとビオチン化アルカリフォスファターゼで検出する方法で調べている。計画では、新しい受容体検索法として表面プラズモン共鳴を利用したタンパク質間相互作用解析装置(lAsys)を用いる予定であったが、HRGを分析用キュベット(CMデキストラン)に固定化したところ、キュベットの構成成分とHRGとの間に異常な相互作用があり、受容体との結合・解離が予期した様には起こらず、キュベットへの固定化方法をさらに工夫する必要がある事が判明した。このため、受容体精製が遅れているが、今後大量の白血球を処理して受容体精製を進め、構造解析につなげて行きたい。
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