研究概要 |
ウシ血液よりT細胞を含む白血球層を分離、凍結・融解により破砕後、分画遠心により膜標品を得た。これを2%Triton X-100を用いて可溶化し、ウシHRGまたはプラスミン処理したウシHRGを固定化したアガロースを充填したカラムに通して結合タンパク質を分離した。当初、各分画をメンブレンにブロットし、ビオチン化したHRGとの結合をストレプトアビジンとビオチン化アルカリフォスファターゼを用いて検出していたが、感度が悪いため,新しい受容体検索法として表面プラズモン共鳴を利用したタンパク質問相互作用解析装置(IAsys)を導入した。HRGを分析用キュベット(CMデキストラン)に固定化したところ、キュベットの構成成分とHRGとの間に異常な相互作用があり、受容体との結合・解離が予期した様には起こらなかった。そこでアミノシランキュベットにHRGを固定化した。このHRG固定化キュベットへの受容体の結合は、遊離のHRGを添加することで抑制されることから、特異的なHRG受容体の検索が可能になった。ドットブロット法で検出していた時には、受容体はHRG固定化カラムから2Mの食塩で溶出すると思われていたが、IAsysによる検索では、受容体は食塩では溶出せず、pHを2.5に下げてはじめて溶出することがわかった。さらにこの溶出画分をDEAEセルロースで分画すると、分子量45000と25000のタンパク質が得られた。N末端アミノ酸配列分析の結果、これらは同じタンパク質で、精製途上で分解したものであることが示唆された。N末端アミノ酸配列をデータベースに対して検索したが、相同なタンパク質は見つからず、新規のタンパク質であると考えられる。現在このタンパク質の構造を解析する作業を進めている。なおこのタンパク質と固定化HRGの結合は、元のHRGよりもプラスミン処理したHRGにより強く阻害されることが観察されている。
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