ズブチリシンのプロペプチドは、成熟体部分の立体構造形成に必要な分子内シャペロンとして機能する他、プロテアーゼインヒビター活性も持ち合わせていることがわかっている。構造的にはそれ単独では立体構造を持たないものの、ズブチリシンと複合体形成すると立体構造を形成するという点でユニークである。本研究では、申請者のこれまでの研究から、プロペプチド単独でも立体構造を形成させることが可能なAla47→Phe+Gly13→Ile+Val65→Ileの三重変異およびこの変異の基となる一重および二重変異をプロズブチリシンに導入し、得られた各変異体の巻き戻り過程について調べた。塩酸グアニジンで変性後、溶液で希釈し、立体構造形成に伴うTrpの蛍光強度の上昇を速度論的に解析した。その結果Ala47→Phe、Gly13→Ileと変異を導入するに従い、巻き戻り速度が速くなり、野生型では20分以上かかっていた過程が、三重変異体では数分以内に終了することが明らかとなった。そして中間体の存在も示唆された。一方、プロペプチドに相同性を示す酵母プロテアーゼBインヒビターおよびヒラタケプロテアーゼAインヒビターについては、大腸菌の最適コドンに合わせて遺伝子を化学合成し、大腸菌を用いた発現系を構築した。野生型インヒビターについて、ズブチリシンに対する阻害作用を調べたところ、両インヒビター共に、ズブチリシンのインキュベーション時間の経過と共に阻害活性が低下していく一時阻害剤であることが明らかとなった。そこで、C末端領域がプロテアーゼとの結合部位であるプロペプチドに合わせるべくインヒビターのC末端6残基を置換したところ、ズブチリシンに対する阻害活性が飛躍的に上昇すると共に分解されにくくなることがわかり、プロペプチド同様、C末端領域が機能部位であると考えられた。設備として購入した超音波ホモジナイザーは、大腸菌に発現させた各蛋白質の調製の際に、頻繁に用いている。
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