研究概要 |
著者らは最近MDCK細胞の頂端側輸送小胞の構成成分であるVIP36が厳密にMan_<7-9>GlcNac_2NAc-Asnを認識していることを明らかにした(Kuge et al.,Glycobiology,9,833-9,839,1999)。ところが、極性化させた培養MDCK細胞において頂端面側と側底面側から分泌される糖タンパク質やそれぞれに局在する膜糖タンパク質は、高マンノース型糖鎖ばかりでなくα-ガラクトース結合やフコースα1→2結合糖鎖についても各面の割合が大きく異なっていた。これらの結果は極性輸送においてVIP36による高マンノース型糖鎖以外にも複数の糖鎖による選別が行われていることを強く示唆している。そこで、まずソーティングシグナルとして可能性のある糖鎖を探るため、極性化したMDCK細胞を[^3H]-グルコサミン標識し、両面の分泌及び細胞表面糖タンパク質N-結合糖鎖の解析を行った。頂端面及び側底面N-結合糖鎖は高マンノース型、及びシアル酸、硫酸の結合した二本鎖、三本鎖であった。一方、分泌された糖タンパク質糖鎖には上記糖鎖に加えてβ-GalNAc残基の結合した糖鎖が含まれており、この糖鎖が分泌機構に関係するか、特定の分泌糖タンパク質にのみ結合している可能性が示された。予測されたフコースα1→2結合やα-ガラクトース結合糖鎖がこれら糖タンパク質のN-結合糖鎖には認められないことから、O-結合糖鎖の重要性が示唆された。現在N-結合型及びO-結合型糖鎖の構造をさらに解析中である。またソーティングシグナル糖鎖を認識するレクチン様分子を検出するためのアフィニティーラベルに用いる基質を作製中である。
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