平成11年度の研究実績 1.プローブ標識した酵素のリガンド結合による構造変化の解析 豚腎臓から精製したナトリウムポンプ標品のCys-964にBIPMを化学修飾し、さらに膜領域に結合する電位感受性蛍光プローブRH-421を導入した材料を用い、反応中間体形成時における酵素の構造変化の解析を検討した その結果 (1)2重標識した酵素標品においてリガンド添加による酵素の構造変化に伴いRH421プローブはBIPMプローブと類似の蛍光変化を示す。 (2)抗性物質オリゴマイシンの添加により、ポンプがナトリウムイオンを閉塞した状態ではRH-421プローブのリン酸化中間体形成に伴う蛍光変化は消失するがBIPMプローブは部分的に変化を維持している。 (3)各プローブの変化の前定常状態での速度論的解析から、酵素の構造変化はリン酸化中間体生成自体を感受しているわけではなく、イオンの結合状態ないしは酵素の中でのイオンの移動を反映していることが示唆された。 2.リン酸化酵素中間体形成とイオン閉塞量の測定 リン酸化反応中間体を経由又は非経由で閉塞されるカリウムイオンの結合をその同族体である放射性ルビジウムを用い測定した。 (1)リン酸化基質の非存在下、酵素は触媒サブユニット当たり2モルのルビジウムイオンを閉塞する事が明らかになった。他方、リン酸化中間体の生成条件ではその50%の結合のみで、これは触媒サブユニット当たりリン酸化中間体が最大50%生成すること、その中間体にのみルビジウムイオンが閉塞されることを示している。 これらの結果を基に平成12年度は 種々のリン酸化基質を用いた系でのリン酸化中間体の生成量の速度論的解析、カリウム(ルビジウム)イオンによる脱リン酸化とルビジウムイオンの閉塞の速度論的解析を展開する予定である。
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