私共の研究室では、細胞の接着と運動が、接着分子とそれを裏打ちするアクチン線維から成る細胞骨格系と接着分子や膜成分を運ぶ小胞輸送系の協調作用により制御されていることを明らかにしつつある。本研究では、接着分子の小胞輸送に焦点を絞り、その制御に携わると考えられるRabファミリー低分子量G蛋白質のメンバーRab11の作用機構を解析し、以下の成果を得た。 1)Rab11の標的蛋白質Rabphilin-11の発見:Rab11は小胞のリサイクリングを制御すると考えられている。本研究では、まずRab11の作用機構を明らかにする目的で、Rab11の標的蛋白質をblot overlay法にてウシ大脳より精製し、そのcDNAをクローニングして一次構造を決定した。また、この標的蛋白質Rabphilin-11は、Rab11とともにゴルジ体およびエンドゾームに局在することを示した。 2)Rab11-Rabphilin-11系の機能の解析:細胞運動の際には、運動方向に形成されたラメリポデイアに向かって微小管が伸びていくが、Rabphilin-11はRab11とともにこの微小管にそって存在することを示した。さらに、Rabphilin-11は、Rab11と同様に小胞のリサイクリングに関与し、細胞運動の制御にも関与することを明らかにした。 3)Rab11-Rabphilin-11系の作用機構の解析:Rab11-Rabphilin-11系の作用機構を明らかにする目的で、Rabphilin-11結合蛋白質の単離を試みた。その結果、Rabphilin-11は酵母Sec13pの哺乳動物のカウンターパートmSec13pと直接結合した。Sec13pは酵母のコート蛋白質の構成因子として小胞体からの出芽に機能しているが、mSec13pの機能は不明である。Rabphilin-11が活性型Rab11と結合すると、mSec13pとより強く結合した。さらに、Rabphilin-11のmSec13p結合ドメインの過剰発現によってRabphilin-11とmSec13pの結合を阻害すると、核周辺部から細胞膜への小胞輸送が阻害された。以上の結果から、Rab11-Rabphilin-11系はmSec13pとの結合を介して小胞のリサイクリングを制御していると考えられる。 このように、本研究は予想以上に進展し、当初の目的はほぼ達成できた。
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