研究概要 |
1.組み換え体ラットメチオニン合成酵素の精製法の確立。 ラットメチオニン合成酵素のcDNAをバキュロウイルスベクターに組み込み,昆虫細胞で大量発現させた。昆虫細胞の酵素含量ははラット肝臓の約500倍であり,酵素の大量調製が可能となった。アポ酵素が不安定だったので,酵素をホロ化して精製した。ラット肝臓酵素の精製法を参考にし,DE-52,ヒドロキシアパタイト,DEAE-TOYOPEARL,Mono-Qのカラムクロマトグラフィーを行うことで,71倍に精製し,純粋なホロ酵素を得た。精製酵素の最高比活性や基質のK_m値はラット肝臓の精製酵素と良く一致していた。以上より,まとまった量の酵素を得ることが困難であった動物メチオニン合成酵素の大量調製への途が拓けた。現在,より簡便な精製法の開発および不安定なアポ酵素の精製を目指して,His-タッグの付いた酵素を発現させ,その精製法の検討を進めている。 2.ラットメチオニン合成酵素の性質と活性発現におけるB12の構造と機能の解析。 精製組み換え体酵素の可視吸収スペクトルは捕酵素活性を持たないcob(II)alamin様であったが,強力な還元剤であるtitanium(III)およびS-アデノシルメチオニンの共存で本酵素の補酵素であるメチルB12様のスペクトルに変化した。また,酵素反応中の酸化的失活反応が強力な還元剤titanium(III)の共存で抑制されることも確認できた。粗酵素抽出液を用いてB12の下方配位子部のアナログの活性を測定することにより,塩基部やホスホジエステル結合領域がアポ酵素への結合に重要であり,そのため酵素活性の低下を招くことが示された。また,B12類とアポ酵素との結合性を調べたところ,シアノB12やアクアB12,アデノシルB12はアポ酵素との複合体形成能が非常に低いことや,エチルやプロピルコバラミンとは不活性な複合体を形成し,光照射によりホロ酵素に変換できることが明らかにされた。今後は,より詳細なB12認識機構の解析を進めてゆきたい。
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